好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】



部屋に戻って、黎は一人きり。
 

昼はあんなに抱きしめたのに、今、その熱はない。
 

自分の右手に視線を落とす。
 

確かに真紅の腕を捕まえた。なのに、そこに留まってはくれなかった。
 

真紅は、黎の腕の中には居てくれなかった。
 

ただ、ずっと抱きしめていたいだけなのに。
 

……それが不可能だということを今日知った。
 

恋愛の常套句(じょうとうく)は、実現不可能なものばかりだ。


「……情けねー……」
 

好き過ぎてどうしていいかわからないなんて。
 

明日から、真紅とは少し離れる。その間に考えをまとめよう。
 

真紅に対して、どう接したらいいのか。


……ただ愛しているだけでは、一緒にはいられないのが現実のようだから。

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