好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
いつも通り朗らかに声をかけてきたのは架だった。
その名にこめられた意味を、当人は最近理解し始めた。
「架くん、おはよう」
「おはよ。いつもより元気ないね?」
当たり前のように並ぶ架。
王子様然とした架への注目のおかげで真紅まで衆目の的になっていたのだが――しかも斎陵学園の生徒ならほぼ知っている影小路姓だし――、架本人から、『真紅ちゃんは兄貴の彼女だから』と言ってくれたので、真紅と架の仲を邪推した嫌がらせは今のところ起きていない。感謝だ。
「そうかな? ママにもそれ、言われたよ」
「兄貴が見たら心配するよ?」
「黎とはしばらく逢えなくて……」
「なにかあったの?」