好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】

+++

「先生にもお母さんたちにも、驚かれちゃったよ」


「あー、急に病状よくなったから?」
 

いつものように、病室のベッドに、窓の方を向いて並んで腰かけている真紅と海雨。
 

――海雨が緊急手術に入った日から一週間、海雨は起き上がれるほどまで回復していた。


まだ病室の外へは出られないけど、室内だったら歩き回ることも出来る。


「一応、手術が成功したから、ってことになってるけど。……本当は、わたしを蝕(むしば)んでいたものがいなくなったから、なんて言えないし」


「言えないね」
 

苦笑をもらす真紅。
 

真紅は、今まで通り『海雨』と呼ぶ。海雨も『真紅』と呼ぶ。


二人の関係は、少しも変わっていなかった。


「学校に戻る目途(めど)も立ちそうだよ。ありがとうね、真紅」


「半分は黒ちゃんが引き受けてくれたから、お礼は黒ちゃんにも言ってね」


「うん」
 

黒藤――影小路の、正統なる後継者。


「ねえ真紅。黒藤さんって……わたしのこと、知ったんだよね?」

< 314 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop