好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
「……ばれてた?」
ちょっとバツが悪そうな顔をする海雨。真紅はくすりと笑った。
「暮無(くれない)様の姿で私の夢に出て来たでしょ。だから名前、『紅姫』なんだよ」
始祖当主は、名を暮無という。
暮れるのことの無い命を、という意味だろうか。
それが由来で、影小路一族では、本家の女子は『紅』の字を名付けられるようになったらしい。
「……徒人のわたしだけどさ、この身体にも始祖当主の影響力は、少しだけ残ってるから。お礼って言ったら変だけど、真紅に何かしたかったんだ」
「お蔭で仕事も楽させてもらってるよ。ね、紅」
真紅の膝の上に、小さな女の子が姿を現した。
妖異の紅姫は徒人には見えないけれど、変化の妖異である紅姫は、変化した姿は見鬼でなくても見ることが出来る。
『海雨様。紅(べに)を遣いに出していただき、ありがとうございます』
「……いい子だね、紅姫は」
海雨が人型の紅姫の頭を撫でると、やはり本性が猫だからか、喉をのばして海雨の手に自分から頭をこすりつけた。
「真紅、澪を連れて来たぞ」