好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
「なんで……そんなこと言うんですかぁ~」
「なんでかな。俺にもよくわからない」
目元を拭う海雨を、澪は優しい眼差しで見る。
「……今すぐ返事が出せなかったら、それでもいいんだ」
「で、ですが、澪さんは、その……」
「うん。海雨ちゃんの恋愛対象になりたいって思ってる。海雨ちゃんが自分に決めた『暮無当主の位置』から動く気になったら、いつかそういう風に見てもらえたら、って」
海雨が自分に定めた、『影小路暮無』の在り方。
誰も愛さない。誰も好きにならない。結婚なんてもってのほか。
最初に愛した、夫以外は。
……その場所を、少しでも揺るがす気になるときが来るのだろうか。
海雨は、涙の残る目元を隠すように、まだ少し俯き気味に答えた。
「……はい」