好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】
12 この先
「真紅」
「うん?」
黎が隣を歩く庵への帰り道、名前を呼ばれて真紅は黎を見上げた。
「……よかったな」
「……うん」
海雨は、澪の告白を受け容れはしなかった。けれど、拒絶もしなかった。
海雨の時間が暮無を置いて、少しずつ動き始めている気がする。
真紅たち、一度ずつ終わりがある始祖の転生と違って、始祖当主には終わりがなかった。
この先、暮無の命がどうなるかはまだわからない。
このまま転生の檻にあるか、その檻を外れて生まれ変わることもなくなるか――。
真紅たちが、まだ転生を繰り返しているように。
真紅から黎の手を握ると、驚いたように見て来た。
「……この先、私たちや暮無様の命がどうなるかはわからない」