お願い!嫌にならないで
「ねぇ、あきちゃん……さっきの電話どこからだったの?」
「株式会社アプリさんです。たしかつい先日から、取引を始めた新規のお客様ですね」
「え……」
「どうかしましたか?」
「う、ううん。何でもない」
不思議そうにするあきちゃんに、普通を装うも、上手くいかない。
しかし、あきちゃんは何を思ったか、私の様子を察してくれたようで、笑顔を向けてくれたあと、また書類に視線を戻す。
──アプリ。田中さん……例のあの人が担当のところ。ということは、辻さん、本当に……
担当を部長に名乗り出たの?
一体、何と言って、部長を納得させたの?
疑問が止まらない。
ここまでしてくれるなんて、少し申し訳なくなる。
脳内が、密かに混乱している。
そして、いつものこの時間なら、まだ居るはずの、辻さんのデスクを見つめた。