お願い!嫌にならないで



「大丈夫そうです。ありがとうございます」

「それは良かったです。今回は設定が、オフラインになっておりましたので、その変更とPC内の設定の諸々の変更をさせていただきました」



俺の初心者丸出しの説明に、女性はうんうんと頷きながら聞いてくれる。

そして、聞いてもらっている最中にも、気になっていたことがあった。



「あの、ちなみに田中様は」

「はい。少々お待ちください」



そう言って、女性はデスクで作業をしていた田中さんを呼びに行く。

呼ばれた奴は、気怠げにこちらへ向かってくる。

相手が水野さんではないからと言って、それ程あからさまな態度をとらなくても良いだろうに。



「終わりました?」

「はい。処置としましては──

「あ、説明は結構です」

「え」

「大体は、分かりますので」



では、と去ろうとする田中さん。

思わず、俺は声を発していた。



「お、お待ちください」



俺の声に、奴は意外にも立ち止まる。

そして、ゆっくりと振り返った。



「はい?」



奴は、眉をひそめた。

後先考えずに、呼び止めてしまったものだから、実は困っていた。

< 103 / 239 >

この作品をシェア

pagetop