お願い!嫌にならないで
それなら、何故わざわざ問い合わせたのか。
そんなこと、疑問を持つ必要も無い。
目的は、水野さんだ。
それなのに俺が来たら、まあ、面白くないのも、分からなくもない。
だが、よく考えてもみてくれ。
俺はある意味、部外者だ。
「たしかに僕は、営業になって、まだまだ日は浅いですが……これから、勉強させていただきます」
「人の会社で、勉強されると困るんだよなぁ」
「精一杯、頑張りますので、何卒よろしくお願い致します」
苦笑い気味に、挨拶の定型文をかましてやる。
奴は、如何にも嫌そうな顔をする。
それでも、俺は今にも歪みそうな口角を上げた状態で保ったまま、睨む。
視線に、水野さんは絶対ここへは来ないぞ!という気持ちをのせて。
そうすれば、奴は一瞬、何かを言おうとしたが、それを止めた。
そして、溜め息を吐き、俺をさらに睨み返す。
こちらも負けじと、表情を保つ。
何を言われるかと、構えた。
「あんた──」
最終的に言われた台詞には、ガッと湧き上がってきたものがあった。
が、そこを堪えた俺は偉い。
そう褒めてほしいところだ。