お願い!嫌にならないで
缶コーヒーを買って、窓際に立ち、少し落ち着く。
一人になって、興奮も収まったからか、田中さんのことを多少思い出しても、悶々とする程度で済んでいる。
「はぁ……我ながら、先が思いやられる」
思わず、天を仰ぐ。
妙な倦怠感に襲われる。
そのときだった。
「お疲れ様です」
控えめな声が聞こえた方へと、目をやる。
「水野さん、お疲れ様です。どうしたんですか?」
そう尋ねると、手に持っていたパンの袋を2つ、俺に見せた。
「辻さん。お腹、空いてませんか?」
今朝と同様、穏やかに微笑んでいる。
両手に一つずつパンを持って、少し照れているようだ。
──水野さん、ちょっと待ってください。今のこの状況、俺には嬉し過ぎます。
だって、また普通に接することが出来ると思ったら、またあの微笑みが俺だけに向けられていると思ったら!
嬉しくない訳が無い。
照れる水野さんにつられて、俺も何故だか照れている。
俺が吃っていると、水野さんが自動販売機の前まで行って、何かを買っている。