お願い!嫌にならないで
自動販売機の前でしゃがみ、彼女が取り出したものは、俺の買った缶コーヒーと同じものだった。
偶然なのかどうかは、知らないが。
その缶コーヒーを手にした水野さんは、俺の方へ向かってくる。
そう思ったが、丁度、俺の真横に設置してある長椅子に、腰を下ろした。
そして、こちらを見上げる。
それに俺は思わず、ドキッとする。
「お昼休みに買い過ぎちゃって」
水野さんが、まるで困ったというように笑う。
「嫌じゃなかったら」
「お言葉に甘えて、いただきます」
どちらのパンをくれるのだろうと、待っていると何やら彼女が、長椅子をポンポンと叩く。
これは、まさか「どうぞ、私の隣に」と促しているというのか。
胸がぎゅうっとなってしまって、苦しくて、もう堪らない。
これだから、水野さんは。
──好きだ。
胸が苦しいのを何とか堪えて、促された通りに隣に座る。
何気なく目線が合った水野さんの頬は、また赤く染まっていた。
色白だから、それが余計に際立つ。
そして、やはり俺もそれに、つられてしまう。
何だよ、これ。
俺ももう、学生じゃないんだから。
あまりの恥ずかしさに、目を逸らす。