お願い!嫌にならないで
「本当にすみません」
「何で謝るんですか」
「だって……」
「水野さんは、何も悪くないじゃないですか。謝らないでくださいよ。俺が自分で勝手に疲れただけ。そんなに気にしないで」
「嫌でも気にします。辻さん、今日、田中さんのところへ行ってくださったんですよね」
「何で、それを……」
冷や汗が流れる。
いや、いずれバレることは、分かっていたことなのだが。
もう知られてしまったのか。
少し気まずい気もするが、俺は約束を守っただけだ、悪いことはしていない。
今は、こんな風に惑わず、堂々としていればいい。
すると、水野さんはアップルデニッシュを持った手を膝に置く。
そして、悪戯っぽく笑う。
「風の噂です」
「そ、そうですか……」
堂々としていようと思っていたものの、やはり動揺してしまう。