お願い!嫌にならないで
「辻さん……」
俺が少しの間、黙り込んでしまうと、水野さんが呼び掛けてくれる。
ここ最近、彼女はよく俺の名前を呼んでくれる気がする。
もちろん、嬉しいのだが。
あんまり、名前を呼ばないでほしいときもある。
堪らない気持ちになるから。
名前を呼ばれる度に、俺の気持ちがこんな風になっているのを、彼女は知らないだろう。
そんな気持ちを何とか抑えつつ、返事をした。
すると、水野さんは俺の目をしっかり見てくる。
その瞳は、少し潤んでいる様にも見えた。
「どうして、そこまでしてくださるんですか……」
「何でだろ。少しでもお役に立てたらと思って……」
いや、違うな。
そんな純粋なものなんかじゃない。