お願い!嫌にならないで



この人を守りたいと思ったことに対しては、確かに間違いは無い。

しかし「この人」と限定している時点で、明らかに別の感情が生まれている。

それをたった今、実感すると自分自身が、めちゃくちゃダサく思えて、どう仕様もない。

だからと言って、それをいつまでも隠して、気取っていれば、いつか気持ち悪がられることは、事実だし。

ここで今すぐ、生まれたこの感情がどんなものであるかを、暴露したって、それはそれで気持ち悪い。

どっちに転んでも答が同じなら、いっそのこと──



「すみません、水野さん……下心です。お役に立てたらとか、そんな綺麗事でこんなことは、出来ません」



水野さんが、目を見開いた。

正直、その反応には、ショックだった。



「あ、あの!でも、守りたいと思ったのは本当で!そこに、少しでも気に入られたいという気持ちがあったのも、事実で!」



必死になっている俺は、やっぱり格好悪い。

水野さんは目を見開いたままで、俺に視線を向けていた。

あまりにも必死過ぎる俺を今。どんな思いで見ているのだろう。

下心がある、なんて突然、暴露されて呆れられた?

もしくは、引かれているかもしれない。
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