お願い!嫌にならないで
これは、あれか?俺は、好意を抱かれてるのか?
そんな…初日から、こんなうまい話なんてあっていいのか?
一目で好きになった女性と、良い雰囲気になってしまうなんて。
そんなことを考えていていると、水野さんは俺に、相変わらず綺麗な微笑みを向けてくれた。
「何だか気持ちが落ち着きました。どうもありがとう」
「……お力になれたようで、何よりです」
その表情は照れているようで、やはり頬が赤みを帯びている。
俺もつられて、顔が熱くなる。
水野さんは、顔が赤くなりやすい体質らしい。
俺と話していると、直ぐに赤くなる。
特に、こうして目が合っているときだ。
「直ぐ…顔が赤くなるのは、元々ですか?」
思わず、ストレートに尋ねてしまった。
ただ単純に、俺を見て赤くなる、彼女の心理を知っておきたかったからだ。
俺が都合よく、自惚れてしまわないように。
動きを止めてしまった水野さんに、しっかりとした確かな答を聞いておきたい。
もう一度、傷つけないように、努めて優しく尋ねる。
「そういう……癖?」
「そ、そうですね。癖のようなものです。私、緊張しやすいので」
「あ、そうなんですね!わかります。俺も緊張しやすいです」
「え、あまりそんな風には見えませんよ」
「よく言われます!けど、俺も人間ですから!」
「あ、そうですよね。ごめんなさい」
「謝らんでも大丈夫ですよ。本当のことなんで!」
何気ない、他愛もない話題に置き換えていく。
できるだけ、明るい話題に。
そうか、わかった。
ストーカー野郎は、直ぐに赤くなる水野さんに勘違いしていたのだろう。
『俺の目を見つめて、直ぐに赤くなる』
確かに、勘違いしたくもなる。
口許へ手を持っていき、上品に笑う赤い顔の水野さんを見ていれば。
彼女は無意識らしいと言うのだから、何ともたちが悪い。
今なら、ストーカー野郎の気持ちを、少しだけわかってやれる気がした。
本当に少しだけなら。