お願い!嫌にならないで
浮かれて、ソワソワしてしまう。
ふと窓の外を見たとき、景色はすっかり暗くなっていた。
星も綺麗に瞬いている。
「あ、そろそろ帰りましょうか」
水野さんに声をかけると、彼女も頷く。
立ち上がり、先に行こうとすると、呼び止められる。
「あの……1つだけ、不安なことがあるんです」
振り返ると、水野さんは胸元で両手を握り締めていた。
「何ですか?何でも言ってください」
俺が促すと、水野さんはどんどん不安そうに、表情を歪めていく。
水野さんの口が動くまで、待つことにする。
不安を隠されてしまうことの方が、よっぽど辛い。
水野さんは頭の中で言葉をまとめているのか、考えているようだ。
表情が覚束無い。
そのままで、ゆっくりと俺を見る。
「田中さんのこと、です」
「え、あ、田中さん?」
「はい」
「何だ、そんなことですか。大丈夫!もう水野さんには、俺が絶対に近付けさせません!」
「そうじゃなくて……」
少々、興奮気味の俺の頭上に、疑問符が飛ぶ。
それを確認した水野さんは、俺に言い聞かせるように、落ち着いた口調で言った。
「辻さんと私が付き合い始めたなんて、感づかれたら、あの人、辻さんに危害を加えたりするんじゃ……」