お願い!嫌にならないで



相変わらず、訳の分からないことを口走ってしまったと、我ながら恥ずかしくなる。

別に、嘘を吐いたわけではない。

本当のことだ。

でも、この話題を出したことは、間違いではなかったようだ。



「え、そうだったんですか?!」



その証拠に、不安そうな顔は消えて、表情は賑やかになっている。

水野さんは大層、驚いているようだ。

彼女は物静かそうに見えて、表情がコロコロとよく変わる。

そこが、面白い。



「辻さん、絶対、野球部だと思ってました」

「何故か、よく言われるんですよね」

「何故か、って……声が大きいですし、動きが何だか、その、野球部っぽいから」

「野球部っぽい動きって、どんな動きですか!まぁ、そういうことなので、ご心配なく!仮に俺が被害に遭ったとしても、大丈夫ですよ。むしろ、田中さんに予期せず、怪我させないように、俺が気を付けないと」



すっかり優しい表情に戻った水野さんに向けて、今後も安心してもらいたくて、ちゃんと伝える。



「水野さんのこと、しっかり守ります。守らせてください」
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