お願い!嫌にならないで
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その翌日の、まもなく終業時間というところ。
俺は外回りから戻り、書類の作成をしていた。
この書類の作成の仕方については、部長や水野さんから以前教わっていたため、何の問題も無かった。
しかし、過去の資料も参考に見てみたいとふと思い立ち、資料室へと向かう。
扉を開け、入って行けば、奥で何やら物音がする。
誰が居るのかと、覗き込んでみた。
すると、そこには小柄な後ろ姿が一生懸命、背伸びを繰り返しては落ち込んでいる。
俺は彼女の背後へ忍び寄り、高い位置にあった一冊の青いファイルを取った。
「これですか?」
「わっ、びっくりした! 辻さんでしたか。あ、ありがとうございます」
「すみません。驚かせてしまいましたね」
「もう! 一言、声を掛けてくれればいいのに」
「すみません」
苦笑いして、そこから動こうとしない俺を、中谷さんは怪しげに睨む。
「私に何か用事ですか?」
「あ、はい。まぁ……」