お願い!嫌にならないで



「何ですか?」

「あのですね。中谷さん、ご報告があります」



中谷さんは、小柄な体格と可愛らしい顔とは真逆の態度で、腕組みをし、また仁王立ちでいる。

この前、水野さんを泣かせたという、有らぬ誤解を解いたときから、少しは仲良くなれたと思っていたのに、そうでもなかったようだ。

とりあえず、そんなことは、どうでもいい。



「この度、俺、辻 泰孝は、水野さんとお付き合いをさせていただくこととなりました!」



俺が単刀直入に始めると、中谷さんは目を円くした。

しばらく見つめ合う中谷さんと、俺。

謎の沈黙に、少し不安になる。

『早く水野さんのこと、安心させてあげてください』

もしかして、中谷さんがあのとき言った言葉の意味を、俺は履き違えていたのだろうか。

履き違えるも何も、他にどんな意味があるのか、検討もつかないが。

それでも、もしそうだったとしたら、この後、もしかすると冷たい視線を向けられることになるのだろう。

「私の水野さんを」とか「こんなムッツリに水野さんは渡しません!」「このムッツリ!」とか言われるんだろうか。

自分でも訳が分からないくらいに、ネガティブに引っ張られていく。
< 125 / 239 >

この作品をシェア

pagetop