お願い!嫌にならないで
「何ですか?」
「あのですね。中谷さん、ご報告があります」
中谷さんは、小柄な体格と可愛らしい顔とは真逆の態度で、腕組みをし、また仁王立ちでいる。
この前、水野さんを泣かせたという、有らぬ誤解を解いたときから、少しは仲良くなれたと思っていたのに、そうでもなかったようだ。
とりあえず、そんなことは、どうでもいい。
「この度、俺、辻 泰孝は、水野さんとお付き合いをさせていただくこととなりました!」
俺が単刀直入に始めると、中谷さんは目を円くした。
しばらく見つめ合う中谷さんと、俺。
謎の沈黙に、少し不安になる。
『早く水野さんのこと、安心させてあげてください』
もしかして、中谷さんがあのとき言った言葉の意味を、俺は履き違えていたのだろうか。
履き違えるも何も、他にどんな意味があるのか、検討もつかないが。
それでも、もしそうだったとしたら、この後、もしかすると冷たい視線を向けられることになるのだろう。
「私の水野さんを」とか「こんなムッツリに水野さんは渡しません!」「このムッツリ!」とか言われるんだろうか。
自分でも訳が分からないくらいに、ネガティブに引っ張られていく。