お願い!嫌にならないで
「水野さんがそうおっしゃるのなら、仕方が無いです。わかりました。お二人がお付き合いしてること、誰にも言いません」
「山本さんにも言ったらダメですよ!」
「わかってますよ! 水野さんとの約束だって言うのなら、ちゃんと守りますから」
水野さんの力は後輩達にとって、かなり絶大だ。
きっと水野さんのことを嫌いな人なんて、居ないんだろう。
ストーカーまで現れてしまうくらいだから。
愛されてるなぁ、つくづくそう思う。
もちろん俺だって、その一人だ。
そして、それぞれ求めていた資料を見つけ、営業部の事務所へ戻る。
事務所へ歩いている間、中谷さんは意外にも俺の隣に並んで歩いていた。
いつもなら、俺のことなど気にせず、先に行ってしまうのに。
それどころか、中谷さんは何故かしらご機嫌だ。
「中谷さん? どうしたんですか」
「いいえ、別に?」
そう言いながらも、中谷さんの口角は上がっている。
それほどまでに、水野さんと俺が付き合い始めたことが、嬉しかったのか?
繰り返すようだが、そうだとしたら、こちらとしても大変嬉しい。
他人からも認められるなんて、そう滅多に無いから。
しかし、その嬉しい反面、気になることもあった。