お願い！嫌にならないで

「はぁ。で？ 結局、何が言いたいんですか？」

「俺が言いたかったのは、何というか……俺がどうとかじゃなくて、中谷さん自身の考えが聞きたかっただけなんですが」



未だに、中谷さんが無言でいる。

戸惑いつつも、言葉を続けた。



「だから……どうして中谷さんは、水野さんの彼氏が俺なら大丈夫だ、って思ってくれたんですか」

「それは、水野さんには幸せになってもらいたくて」



中谷さんは優しい口調で、そう言った。

先ほどまでの中谷さんとは、まるで別人のようだ。

頬が緩み切っている。



「水野さんって、温厚な性格だけど、格好良いじゃないですか」

「ああ、たしかに」

「分かってくれますか。それに、部下がミスしたら咎めるわけでもなく、フォローをしてくれる。でも、叱るときには、意外とビシッと叱ってくれて。格好良いところ、見せ付けられっぱなしだから……」



中谷さんは、少し伏し目がちになった。



「水野さんの表裏の、その裏側が、私には見えないんです」

「俺だって、人の裏側なんて見えませんよ」

「見えてますよ」

「え」