お願い!嫌にならないで
「きっと見えてますよ、辻さんは」
「な、何言って……」
「それも無意識なんですね。水野さんが悩んでること、気付いたくせに。何年も一緒に居る私たちの、誰よりも先に」
「いやいや。気付いていたとしても、気を遣って触れないようにしていただけの人も、もしかしたら居たかもしれませんよ」
「へぇ。じゃあ、辻さんの言うことが本当だったとしたら、実際に行動したのは辻さん、ただ1人ってことになるんですよ。それって、スゴくないですか?」
ときどき皮肉めいた発言が、あったような気がしないでもない。
それでも、つい照れる。
とてもむず痒い。
そんな俺の反応を見て、中谷さんは余計に小突いてくる。
「それに水野さんったら、辻さんの話になると、直ぐ真っ赤になっちゃうんですよ」
「え! そうなんですか?」
「あれ、知りませんでした? 私、ずっと一緒にいて、あんな乙女な水野さん、今まで見たことありませんでしたからね」
水野さんからも本当に想われていると考えると、今更ながら熱い感情が込み上げてきた。