お願い!嫌にならないで



「きっと見えてますよ、辻さんは」

「な、何言って……」

「それも無意識なんですね。水野さんが悩んでること、気付いたくせに。何年も一緒に居る私たちの、誰よりも先に」

「いやいや。気付いていたとしても、気を遣って触れないようにしていただけの人も、もしかしたら居たかもしれませんよ」

「へぇ。じゃあ、辻さんの言うことが本当だったとしたら、実際に行動したのは辻さん、ただ1人ってことになるんですよ。それって、スゴくないですか?」



ときどき皮肉めいた発言が、あったような気がしないでもない。

それでも、つい照れる。

とてもむず痒い。

そんな俺の反応を見て、中谷さんは余計に小突いてくる。



「それに水野さんったら、辻さんの話になると、直ぐ真っ赤になっちゃうんですよ」

「え! そうなんですか?」

「あれ、知りませんでした? 私、ずっと一緒にいて、あんな乙女な水野さん、今まで見たことありませんでしたからね」



水野さんからも本当に想われていると考えると、今更ながら熱い感情が込み上げてきた。
< 131 / 239 >

この作品をシェア

pagetop