お願い!嫌にならないで



「実は俺たち、見ちゃったんです……」



十分に勿体振ったあと、恐々とした演技をする。

すると、先程まで苛立っていたはずの山本くんの表情が一瞬、無になる。



「…………何を」

「見ちゃったんです」

「だから、何を?」



山本くんの様子を見るに、無表情に見えた顔は、実は強張っているらしい。

意外と山本くんは、ビビっている?

もしかして、と悪戯心が疼く。

それと同時に、この居たたまれない状況を打破する方法を思い付いた。



「見ちゃったんです。ね? 中谷さん」

「えっ?!」



不意打ちに中谷さんが、慌てふためいた。

俺は必死のアイコンタクトで、話を合わせてほしいと伝える。

中谷さんは嫌そうな顔をしたが、何だかんだ合わせてくれるようだ。



「そっ、そう! 見ちゃったの!」
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