お願い!嫌にならないで

彼の営業車の助手席に乗り込む。



「あ、山本さん。俺、運転しましょうか!」

「大丈夫ですよ。気にせず、乗っててください。眠気が襲ってきて、危機的なときは任せます」

「は、はいっす」



これは勝手な解釈かもしれないが、彼と俺とでは性質が、まるで真逆だと思う。

俺が喧しい人間であるならば、彼は冷静な、落ち着いた人間ではないだろうか。

しかし、案外そういう奴同士、うまが合うものだ。

もっと仲良くなるにはどうしたらいいか、と俺が考え込んでいると、山本くんが話しかけてきた。



「今日は水野さんでなくて、すみませんね」



突然の台詞に驚き、勢いよく山本くんの方へ首を向ける。

自分でもよく分かる。

動揺をしているということが。



「ちょ、山本さん…な、何言ってんすか……」

「あれ?水野さんのこと、気に入ったんじゃないんですか?昨日だって、途中で席を外して出ていった水野さんを追い掛けていったっしょ?」

「あ、あれは!何か、俺が可笑しなこと言っちまったと思って…」



俺は一生懸命に、言い訳をした。

山本くんはそれに対して、意味ありげに含み笑いする。



「だから……気になるんでしょ」



顔面にアッパーを決められた様な気分だ。

山本くんの攻めに、軽く目眩すらしてきた。

俺は眉間を押さえて、項垂れた。

その俺の様子を、楽しそうに山本くんはチラ見している。

それが、かなり悔しかった。
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