お願い!嫌にならないで
「……過去がそうだったとしても、今は全く違いますよ」
全く違う。
少なくとも、俺が知っている、出会ってからの山本くんは、そんな人じゃない。
知ったか振るような姿は、一度も見ていない。
俺が悩んでいれば、少しずつ足を踏み入れるように、丁寧に探ってくれる。
分からないなら担当に直ぐ様、その仕事を投げるという荒業だって使う。
この前、俺が水野さんに嫌われているんじゃないかと悩んでいたとき。
水野さんと話すきっかけを作るために、気を使ってくれて、山本くんが俺に契約書を託してくれた、あのときだって。
『それに俺だと、にわか知識を教えてしまうといけないので』
確かに彼は、あのとき、そう言った。
決め手はそれだけでは無いが、確かに彼はそう言った。
「田中さんはそれについて山本には、注意はされたんですか……?」
「見ていられなかったからだ」
「そうですか」
ここで初めて、俺の言葉にちゃんと応えてくれた。