お願い!嫌にならないで
Q11.アナタなら最高のデートを演出することができますか。
日曜日の午前11時。
駅前の時計塔にて、私服に身を包んだ彼女を見つける。
「水野さん!」
俺が呼び掛けると、スマホに落としていた視線を上げ、こちらに気付く。
そして、微笑んでくれる。
その頬が赤らんでいた。
「すみません! お待たせしました」
「い、いえ」
水野さんは短く返事をすると、特に何を言うでもなく、俺をじっと見ている。
「ん? 何か変ですか?」
生憎、センスなど、あまりよく分からない。
ただ家にある服のうちでも、一張羅の部類となる物を引き摺り出してきた。
黒のVネックTシャツにグレーのジャケット、そしてジーンズ。
え、コレ、実際どうなの? 地味? ラフ過ぎた?
そうならないために、ジャケットを羽織ってみたんですけど。
悩んでいると、水野さんはゆるりと首を横に振った。
「変じゃないですよ。辻さんの私服が新鮮で、見惚れちゃいました」
あー、良かった!
外してなかった!
やりました、俺。
水野さんに見惚れられちゃいました。
あまりに照れ臭くて、顔を手で覆う。
いや、そもそも。それよりも。俺なんかよりも。
己の顔を覆った指と指の間から、彼女を覗く。