お願い!嫌にならないで



扉に黄色い電気の灯る「4番」スクリーン。

その中で、中段の左端の辺りに座った。

周りを一瞥すれば、女子高生の2人組や女の子の数人のグループ、カップル、中には家族連れで席はそこそこ埋まっていた。

すると、水野さんと見事に気が合ったようで、彼女が小声で話し掛けてくる。



「人気俳優さんと人気の清純派女優さんがダブル主演なだけあって、お客さんもたくさん居ますね」

「本当ですね。こんなに人が多いとは、正直思ってなかった」

「……でも、意外でした」

「ん? 何がです?」

「辻さんが恋愛ものを選ぶなんて」

「俺、ラブストーリーとか柄にもなく案外、観ますよ」

「へ、へぇ……!」



素直に言うと、水野さんに顔を逸らされる。

多分、照れているんだろう、と思いたい。

引かれると困るけど、好きなものは好きだし。

でも、そろそろ顔を見せてほしい。

どんな顔をしているのか、気になるから。

照れているというのは、確信があった。

顔を背けていても、ほら、耳が真っ赤だ。



「あのー、水野さん? 笑ってます?」



笑ってはいないのは承知の上で、冗談を言ってみる。



「ちょっと、ちょっとー。あんまり笑われると、さすがの俺も傷付きますよー」



すると、ようやく、ゆっくりとこちらを向いてくれた。
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