お願い!嫌にならないで
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街中を走り回った俺は息も上がり、花壇に座り込んでいた。
「はぁ、はぁ……情けね。学生時代なら、まだまだいけたのに」
どこにいるんだ。
駅前の通りも、路地裏も、その周辺の通りにあるコンビニも少し覗いてみたりした。
それでも、見つからない。
花川産業へも改めて、俺が探している間にすれ違いで、訪問したりしていないか確認にも行った。
担当の堤さんにも、会ってもらえ、そのときに無理を言って、時間の猶予を少しもらうことが出来た。
さて、引き続き、探そう。
そう思い、立ち上がる。
しかし、当ては無い。
また走り回ったところで、体力を削られるだけで、効率が非常に悪い。
他に水野さんが行きそうな、または通りそうなところと言えば。
少しぐっと考えてみて、ふと思う。
――俺、水野さんについて1割、2割も知れていない。
水野さんについて知っていることは、意外にも食べることが好きなこと、意外と反応が純粋で無邪気なところ、強く見せていても、涙脆いし、内実はめちゃくちゃに無理をして頑張っていること、そして――。
そうそう頼ってはくれないところ。
「やっぱり俺って、そんな頼りないかなぁ……?」
自分で言って、泣けてきた。
涙が溢れるほどではないが、少し目の前の景色が滲んだ。
とりあえず、こんなことではいけないと、己を落ち着かせる。
徐々に視界も晴れてきた。
気を取り直して、両頬を挟むように手のひらで叩き、喝を入れる。
また歩き始めて、通りの交差点を2つくらい過ぎた辺りまで来ると、その角にお洒落なカフェがあった。
ガラス張りで、店内がよく見える。
こんなところにカフェが在ったんだなぁ、と呑気に通り過ぎそうになった。
しかし、その足を慌てて、止める。
自分の目を疑った。
そのカフェの窓際の席に、水野さんが居たから。
しかも、その向かいには、田中さんが居たのだ。