お願い!嫌にならないで
Q13.届かない想いなら、しまって置いた方がいいのでしょうか。
俺は、水野さんと奴の姿を見つけるなり、その店へ駆け込んだ。
水野さんが納得して、奴と一緒に居ようと思うはずが無い。
何かしらの理由があったとしても、彼女が奴と同じ空間に居ることが、平気な訳ないのだから。
入ったカフェの内装は、やはり真新しい。
すると、奥の方から若い女性店員が現れて、俺をたどたどしく接客してくれる。
「いらっしゃいませ。お一人様でしょうか……」
「いえ。待ち合わせです」
そう言えば、すんなりと店内へ通された。
そうして、向かうところは決まっている。
窓際の席、だ。
外から見た窓際の、その席に水野さんの華奢な背中を見つけた。
その正面に座る奴は丁度、厭らしくニヤけているところだった。
「 水野さんっ……!」
すると、水野さんはもの凄い勢いで振り返る。
大きく目を見開き、既に頬には涙が伝っていた。
「……っ! 辻さ……」
反応はしてくれたものの、不自然な体勢のままで、その場から動こうとしない。
テーブルの上に置かれた腕は、奴によって固定されている。
この期に及んで、まだ懲りないのか。
怒りが沸々と込み上げてくる。
その上、気味が悪いと思うのは俺が現れても尚、水野さんだけに視線を合わせていて、一度も俺を見ないこと。
――こいつ。毎回、毎回わざとか?
あと一歩、距離を詰める。
「……あの、田中さん。離してもらえますか」
奴は思った通りに、無視を決め込む。
まるで、胃もたれするように不快感が押し寄せてきて、うんざりする。