お願い!嫌にならないで
「『もう少し待っていただくことは出来ませんか』って。汗だくだくでしたよ。それにしても、びっくりするくらい元気な方ですね」
「あ……」
「親切そうな良い部下がつきましたね。さすが、水野さん。先輩が良いからだ」
温厚な堤さんが、あはは、と声を出して本当に嬉しそうに笑ってくれる。
ほら。
ほらね、やっぱり辻さんって、凄い人だ。
私もしつこいようだけど。
初対面で私が堤さんとお会いしたとき、おどおどしてしまって、堤さんまでつられて、まごつかせてしまった。
まともに話せるようになったのも、堤さんが優しい笑顔で迎え入れてくれるようになったのも、1ヶ月経った頃だった。
だけど、辻さんは初対面で、心を掴んでしまった。
辻さんのことは……大好きだけど、それでも、やっぱり悔しい。
だって、この人が私に希望をくれた先駆者。
どんなに辞めようと思っても、4年も5年もここに居られる希望の台詞をくれた、一番最初の人。
『やっぱり、あなたじゃなきゃ』
そう言ってくれた張本人だから。