お願い!嫌にならないで
「辻は……初めから、ああいう人です。元気を分けてくれて、何でも気付いて、みんなに声がけをしてくれます。営業部に来て、初日からそんな人でした」
「初日から? それは凄い。だけど、きっと部下さん……辻さんか、慣れない環境でそう動けるきっかけは、どこかにあったんじゃないですかね」
「きっかけ、ですか」
私が返すと、堤さんは頷く。
「今日、ここへ彼が来てくれた時、必死になって、水野さんを探していましたよ。きっとあなたを尊敬しているからじゃないですか?」
「そんな、そんな。尊敬なんて……」
「そう謙遜せずに。あなたがちゃんと真心を込めて、面倒を見ている証拠です。だから、彼はあなたを信じているから、だから、あんなにも必死になれる、僕はそんな気がしますね」
「…………もう、堤さんったら、辻のこと、気に入っちゃいましたか?」
照れ隠しなのか、あまりにも辻さんを褒めるから嫉妬なのか、混じってしまったけれど、冗談を言って、自分自身を誤魔化してみる。
田中さんのときは、とても有り難かったけれど。
辻さんにここの担当を取られたら嫌だなぁ、と思う私は、拗ねているんだと気付く。
自分勝手かもしれない、だけど。
すると、不安になっていた私に堤さんが、また笑う。
「確かに、あの人はみんな、お気に入りになりますね」
ほら、もう辻さんには敵わない。
内なる私は、ホロリと涙を溢した。
「でも、僕は水野さんのままが良いです」
「え」