お願い!嫌にならないで
「僕、鈍臭いでしょ」
「いえ。そんな風に思ったことはありませんよ」
「いやいや、本当のことです。だから、僕が理解出来ないとき、一切顔に出さず、何度でも丁寧に対応してくれるところ、本当に助かってます」
堤さんはありがとう、と頭を下げる。
むしろ、私の方こそ。
私の拙い対応でちゃんと満足してもらえて、こんなに嬉しいことはない。
「それに、僕がこの係になって、初めて担当についてくれたのが水野さんでしたから。あれから、もう3年くらいになるのかな」
「……たしか、4年目になりますかね」
「4年か。もうそんなになるのか。早いですね」
「そうですね」
2人で懐かしんで、微笑み合う。
堤さんが不意に言った。
「水野さんの説明が分かりやすいから、安心して仕事が進められる。やっぱり、あなたじゃなきゃ」
『やっぱり、あなたじゃなきゃ』
不意に言われたら、また嬉しさがぶり返して、そのあまり、息が止まりそうになる。
温かくて、柔らかい表情の堤さんに泣きそうになった。