お願い!嫌にならないで



「僕、鈍臭いでしょ」

「いえ。そんな風に思ったことはありませんよ」

「いやいや、本当のことです。だから、僕が理解出来ないとき、一切顔に出さず、何度でも丁寧に対応してくれるところ、本当に助かってます」



堤さんはありがとう、と頭を下げる。

むしろ、私の方こそ。

私の拙い対応でちゃんと満足してもらえて、こんなに嬉しいことはない。



「それに、僕がこの係になって、初めて担当についてくれたのが水野さんでしたから。あれから、もう3年くらいになるのかな」

「……たしか、4年目になりますかね」

「4年か。もうそんなになるのか。早いですね」

「そうですね」



2人で懐かしんで、微笑み合う。

堤さんが不意に言った。



「水野さんの説明が分かりやすいから、安心して仕事が進められる。やっぱり、あなたじゃなきゃ」



『やっぱり、あなたじゃなきゃ』

不意に言われたら、また嬉しさがぶり返して、そのあまり、息が止まりそうになる。

温かくて、柔らかい表情の堤さんに泣きそうになった。

< 195 / 239 >

この作品をシェア

pagetop