お願い!嫌にならないで



取引先の会議室に通された俺たちは早速、プリンター製品のプレゼンを始める。



「──そして、次にこちらですが……こちらの製品は以前の型よりも、性能が上がっております。特に比較いただきたいのが……」



あれ? どうしたんだ、俺。

どうしよう、次の言葉が出てこない。

あんなに下準備してきたのに。

頭痛も増してきているし、目も回る。



「あ……えっと、すみません。き、緊張で、少し飛んでしまいました。し、失礼しました……ええっと……」



笑って誤魔化して、時間稼ぎをしても、まだ次に言うことが思い出せない。

参ったな、これは。

完全に頭が混乱している。

すると、山本くんが普段、俺たち身内の中では滅多に見せない、爽やかな笑みをつくって、横から入ってきてくれた。



「失礼致しました。こう見えて、辻はまだ新人なものですから。で、こちら、比較いただきたい点が、解像度ですね。以前、地図をよく印刷されると伺っております。そこで、地図の線が潰れてしまうとのことでしたが、そのことについても対応出来るかと思います」

「パンフレットだけでは、よく分かりませんが……本当に変わりますか」

「ご不安でしたら、次回、実物をお持ちします」



そうして、結局は最後まで山本くんが繋いでくれた。

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