お願い!嫌にならないで



「──辻さん」



肩を揺すられて、目が覚める。



「着きましたよ。体調、どうっすか」

「……っ」



頭痛が少し残っている。

未だにズキズキ痛む頭を、強めに押さえる。

それにしても、今度はよっぽど深い眠りについていたらしい。

カピバラの大群に追い掛けられることもなかったし、そもそも夢は見なかった。

しかし、頭はフワフワしている。

そんな俺を見て、山本くんは気にしてくれる。



「今日はもう、早めに上がってください。相当、体調悪そうですし。部長には、俺から言っときます」

「……ありがとうございます。ちょっとまだ、しんどいので少し休んでから帰ります」

「そうしてください」

「あと、部長へは自分で言います。部長、情報は誰よりも先に知っていないと嫌がりますもんね」

「辻さんも分かってきたじゃないっすか」



あはは、と苦笑いで返す。

その後、山本くんとは別れ、部長に早退の旨を電話で伝えた。

そして、そのまま覚束ない足で、休養室へと向かう。
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