お願い!嫌にならないで



やっとの思いでやってきた、休養室の扉を開く。

ここへは総務の頃、何度か来たことがある。

当時は同僚たちと残業をして、いつも終電を逃しがちなメンバーで一夜を明かす、それが何度もあった。



「懐かし……」



今は残業という概念が無い。

営業となった今は外回りの為、そもそもタイムカードは無いし、現場から直帰することも結構ある。

あの頃は、あの頃で楽しい思い出もあったな、などと懐かしむ。

しかし、懐かしい気持ちで居ても、未だに頭は虚ろだ。

そのまま扉を閉め、ソファに座り込むと、直ぐにまた眠気がやって来る。

眠気に促されるまま、横になった。

倦怠感と頭痛と、未だに治まらない胃の不快感に悩まされながらも、今日の商談を思い出す。

思わず、溜め息が出る。



「今日は、本当に駄目だったな」



山本くんや相手の取引先にも、迷惑をかけたことに対して、情けなさや悔しさが込み上げてくる。

思い返していると、何だか体が熱くなってきた。

下手したら、これ、熱が有るかもしれない。

とりあえず、少しでも体を楽にして帰るために、休むことにする。
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