お願い!嫌にならないで
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どれくらいの時間が経ったのだろう。
真っ暗な景色の中で、意識が戻る。
瞼越しに蛍光灯の明かりを感じた。
窓も無い、この部屋では外の様子が分からないので、時間も止まっているのではないかと錯覚さえする。
まだ起きたくなくて、ソファの背もたれ側に寝返りをうつ。
腰より下は、毛布にくるまれていて暖かい。
とても快適だ。
……ん? 毛布にくるまれて……?
俺、自分で毛布なんて、出したっけ?
不思議に思い、その場で上体を起こす。
すると、シャツのボタンが半分以上外れ、はだけていることに気付く。
更に、白いフェイスタオルが俺の腹の辺りにあった。
いくら俺が寝惚けていたとしても、まさか自分でここまで準備出来るはずはない。
だとしたら、俺以外に誰かがこの部屋に来たということになる。
でも、どうして、人が出入りすることが出来たんだ?
この休養室は、内側にしか鍵がない。
それを締めたはずなのだから。
急に背筋が凍る。
「え、え? 俺、鍵締めたよね? え?」
静かな空間が怖いので、とにかく自分で喋る。
「いや、締めた。絶対、締めてるからね、俺。そう! 確かめりゃ、良いんだって! そうそう!」
五月蝿い一人言を続けながら、扉の鍵を確認しに行く。
ノブに手を掛ければ、しっかり鍵も締まっていた。
「ほらね! 締まってるじゃん! 」
おつむの弱い俺は、しっかり戸締まりをしていることに一瞬だけ安堵したが、そういうことじゃない。
「……え、鍵、締まってるじゃん」