お願い!嫌にならないで



******



どれくらいの時間が経ったのだろう。

真っ暗な景色の中で、意識が戻る。

瞼越しに蛍光灯の明かりを感じた。

窓も無い、この部屋では外の様子が分からないので、時間も止まっているのではないかと錯覚さえする。

まだ起きたくなくて、ソファの背もたれ側に寝返りをうつ。

腰より下は、毛布にくるまれていて暖かい。

とても快適だ。

……ん? 毛布にくるまれて……?

俺、自分で毛布なんて、出したっけ?

不思議に思い、その場で上体を起こす。

すると、シャツのボタンが半分以上外れ、はだけていることに気付く。

更に、白いフェイスタオルが俺の腹の辺りにあった。

いくら俺が寝惚けていたとしても、まさか自分でここまで準備出来るはずはない。

だとしたら、俺以外に誰かがこの部屋に来たということになる。

でも、どうして、人が出入りすることが出来たんだ?

この休養室は、内側にしか鍵がない。

それを締めたはずなのだから。

急に背筋が凍る。



「え、え? 俺、鍵締めたよね? え?」



静かな空間が怖いので、とにかく自分で喋る。



「いや、締めた。絶対、締めてるからね、俺。そう! 確かめりゃ、良いんだって! そうそう!」



五月蝿い一人言を続けながら、扉の鍵を確認しに行く。

ノブに手を掛ければ、しっかり鍵も締まっていた。



「ほらね! 締まってるじゃん! 」



おつむの弱い俺は、しっかり戸締まりをしていることに一瞬だけ安堵したが、そういうことじゃない。



「……え、鍵、締まってるじゃん」
< 206 / 239 >

この作品をシェア

pagetop