お願い!嫌にならないで
「これも、水野さんですよね?」
動揺、動転、混乱からようやく抜け出して、落ち着いてくる。
「は、はい。とても汗をかいていたから。だから、拭かせてもらいました。勝手に……ぬ、脱がせたりしてすみません」
「いいえ。水野さんなら、大歓迎ですよ」
俺が言うと、水野さんは狼狽えてしまう。
ああ、可愛いなぁ。
もう少しからかいたくなる。
「これって、もしかして途中でしたか? なんなら続きしてもらっても……」
「も、もう出来ません!」
すっかり顔が赤くなった水野さんに胸を鷲掴みにされ、内心悶えてしまう。
よし、俺、一回落ち着こう。
そうでもしないと、善からぬことを考えてしまいそうだ。
一回、落ち着け、俺。
落ち着いて、ボタンを留める。
その間も、何度か水野さんと目が合う。
「……水野さん?」
「えっ?」
「何か、気になることでもあるんですか?」
「え……あ、あの……き──」
「き?」
俺が尋ね返すと、水野さんは黙り込んでしまった。
一瞬、無言になった空間で、彼女の方から声を発する。
「い、いえ! やっぱり大丈夫です」
「ええ? 言って、すっきりした方が良いですよ」
「本当に大丈夫ですから! そ、それよりも……山本くんから聞いて来たんです。体調は? もう平気ですか?」
「休んだら、かなり楽になりました。休む前は、家に帰る気力も無かったので」
「そんなに悪かったんですか……」
「まぁ。水野さん、ちなみに今って何時ですか」
「18時半です」
「え?」