お願い!嫌にならないで
「田中です。よろしくお願いします。水野さんの後をついて回ってるんですか?」
「ああ、はい。まだいろいろと教わっている段階で」
「そうですか」
そ、そうですかって、何ですか!
思わず、目を少し見開いた。
俺が微かに驚いた理由は、その言いぐさだけじゃない。
「そうですか」を言っている時点で、彼の視線が既に水野さんを見ていたからだ。
なかなかに、下心丸出しの表情でいる。
水野さんは正面を、ずっと向き続けているものの、実際その視線がどこを捉えているのかは、分からない。
田中さんという人物の第一印象が、ガラリと変わった。
苦手だ。
彼は分かりやすいほどに、俺を敵対している。
それを無理に仲良くなろうとは、これっぽっちも思わない。
俺にしては、珍しいことだ。
理由は、自分自身でもわかっている。
水野さんが嫌がっていることに気付かない精神、それ故の振る舞い。
それが俺が抱く、彼に対する違和感。
その他に何がある?