お願い!嫌にならないで
俺が呼ぶと、手を止めてまで、こちらを向いてくれる。
水野さんと、目がバッチリと合った。
忙しいときに声をかけられ、迷惑だろうに、特に何とも思っていなさそうな表情で俺を見る。
この状況で沸き上がってくる、俺のこの感情は何だろう。
もどかしいような、むず痒いような、非常に言葉に表し難い。
「水野さん」
「はい」
「手伝えること、ありませんか?」
「手伝えることですか……?」
水野さんは、ほんの少し考える仕草を見せたあと、柔らかい表情で答えた。
「あとは簡単な入力だけなので、大丈夫ですよ。ありがとうございます。お気持ちだけで」
そう言って微笑むと、またパソコンに向かう。
少し寂しくなった。
俺の中で、勝手に確信していた。
外回りで奴と再会した、あの時の出来事を吹っ切れていないのではないか、そんな気が勝手にしていた。
水野さんは、もはやパソコンだけに集中している。
伏し目がちなのも、また悩ましい。
俺はめげずに、そっと声をかけ続けた。
「あの!」
そろそろ鬱陶しがられてもいい頃だというのに、水野さんはちゃんと俺を見てくれる。
「あ、あの!仕事終わったら、このあと……パァッと呑みにでも行きませんか、ご一緒に!」
少し大きめの声で、そう言ってみた。
水野さんは、驚いた様子で固まっている。