お願い!嫌にならないで

「本当に?顔が赤いようですけど……無理してませんか」

「してません、してません!」



俺たちがこうして、会話している間にも大将は、にやけながら御通しを置いていく。

そして、直ぐにいなくなる。

にやけたりするのを、本当に止めてほしい。

おまけに水野さんに、気を遣わせてしまっているし……



「本当ですか?」

「本当に本当です!」



大将が「水野さんは彼女」というワードから妄想してしまって、内心は大興奮している。

それを覚られたら、絶対にまずいと必死取り繕う。

だが、そうして無理をすれば、頬が熱くなって、気付かれるのも時間の問題だ。

なかなか粘ってくる水野さんを抑える術もなく、動揺が止まらない。

それなのに、彼女は追い討ちをかけてくる。



「聞いたことありませんか?人って、嘘ついているとき、同じ言葉を2回繰り返すそうですよ」



水野さんはクスクス笑いながら、そう言った。

だから、少し安心した。

それと同時に、恥ずかしい。

真剣だった彼女の顔が、笑顔でいるということは、つまりそういうことだ、多分。

俺の顔が赤い理由が、体の具合が悪いということではない、それがバレた。

非常に恥ずかしい。

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