お願い!嫌にならないで
「いただきます」

「めちゃくちゃ旨いんで」

「辻さんのイチオシですもんね」

「お、辻くん、推してくれてるの!嬉しいねぇ」

「当たり前!他には無いから。こんな旨くて、親身になってくれるところは」

「そんなこと言ってくれるのは、辻くんくらいのものよ」



大将がニカッと笑い、水野さんは俺の隣で微笑んでいた。



「あ、どうぞ、食べてくださいね」



再び、俺が水野さんへ勧めると、彼女は迷わず口へ運ぶ。

すると、間髪入れずに「ん」と声を漏らした。

もぐもぐして、しばらく話せなさそうだ。

俺も一本取り、ねぎまを頬張る。



「あー、やっぱ旨いわ、大将!」

「おう、ありがと」



「ね」と水野さんを見ると



「はい、とっても美味しい」



と、上品に微笑むものだから、これじゃまるで、親しい関係にあるようで、変に気が張る。

おそらく、こんなくだらないことを考えているのは、俺だけなのだろう。

水野さんは、純粋に食事を楽しんでいる様にしか見えない。

少し淋しく感じたが、水野さんは生き生きとしている。

きっと純粋に楽しんでくれている、そのはずだ。
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