お願い!嫌にならないで
「え」



案の定、水野さんは驚いたように反応する。

しかし、表情とは裏腹に、顔色がますます赤くなっていく。

さっきから何なんですか、この反応。

どう動いていいのか、分からないから、怖い。

冷や汗まで、滴る。



「あの、無理には言いませんけど……」

「大丈夫、ですよ」

「明日も仕事ですし、仕事に支障が出たら、困りますもんね。無理には…………って、良いんですか!」

「良いですよ」



改めて水野さんを見れば、まだ頬はかなり赤い。

しかし、特に問題も無さそうに、微笑んでいる。

微笑んでいるのだが、そのまた、しかし。

その微笑みが、まだ固い。

まだ彼女は、何か無理をしているのだろう、そう俺は推測する。

あまり負担をかけないように、と帰りながら話すことを提案した。

彼女はそれに、すんなりと頷いてくれた。

ゆっくりと歩き始める。



「そういえば、水野さんって電車通勤でした?」

「え、はい、そうです」

「そうなんですね。俺も電車なんですよ」

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