お願い!嫌にならないで
笑顔の部長と握手を交わし、全員から拍手をもらうこともでき、俺は晴れて営業部の一員となれたようだ。
「じゃあ、辻くんのお世話、水野さん頼む。いいかな」
「わかりました」
優しそうな水野さんならば、安心だ。
教えられたこれからの自分のデスクへと、安心して座る。
一番壁際の席だ。
「わからないことあったら、また聞いてください」
「はい。ありがとうございます」
水野さんの頬がいちいち赤くなるのは、照れ屋だからなのかな、などと考えてしまう。
そして、頬が緩む。
そんなことをしていれば、営業ミーティングが唐突に始まり、俺は仕事に意識を集中させた。
──といったところかな。菊地くんは丸中商事さんへの見積書は?」
「あと、少しで出せます。部長、チェックお願いします」
「了解。早めに頼むぞ」
俺には、まだまだ理解しきれないミーティングに切りがつき、部長が俺を見る。
「辻くんは、水野さんの行くところへ同行して、挨拶回りをしておいで」
「はい!」
水野さんの方を見ると、パソコンに向かって真剣に打ち込んでいる。
少し悪いとも思ったが、よろしくの挨拶くらい良いだろう。
「水野さん、お邪魔します。よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ」
そういって、くすっと笑う。
それもまた、愛らしい。
それを見ていた「あきちゃん」が手をすっと上げた。
「部長」
「どうした?中谷」
「今夜は辻さんのために、歓迎会やりますよね。休憩のときにでも、お店探して予約しときます」
「おお、それは助かるな。みんな行けるか?」
部長と「あきちゃん」こと中谷さんと、俺以外の4人が一斉に頷く。
「じゃ、7人で予約しときますねー」
なんて温かい部署なんだ。
もはや俺は泣きそうだった。