お願い!嫌にならないで
駅に到着し、改札を通る。
ホームへ出れば、自然と2人は横並びになった。
水野さんの前髪が、風になびいている。
その前髪の隙間から覗く、彼女の視線が気になっていた。
今、彼女の考えていることが分かれば、良いのに。
やはり何処を見ているのか、分からない。
もどかしい。
沈黙が、そろそろ辛くなってきた。
そもそも俺が「もう少し話をしたい」と言ったのだ。
他愛も無い会話も、在庫を切らしてしまった。
だから、ここは俺の中で突っかえていた、あのヘビーな話題を出すときなのだと、覚っていた。
田中さん、もとい「ストーカー野郎」のことだ。
「あの……あの人、田中さんとは、付き合っていたんですか?」
「え?」
俺が恐る恐る、でも唐突に聞くと、間髪入れずに反応された。
あまり触れてはいけないとは知りつつも、俺も言葉を選びながら話を続ける。
「今日、会社の前で会ったとき、水野さん、あの人に対して『執着』って言葉使っていましたけど……まさか、過去に付き合ってはいたんですか?」