お願い!嫌にならないで
昨夜の食事から、帰り道までを思い出しては、うっとりしてしまって、つい溜め息まで漏れる。
それにしても、昨夜から私が変だ。
あの楽しい時間を過ごしてから、思い返せば、うっとりしてしまうし、ドキドキしている。
昨日の昨日まで、こんなことはあまり無かったのに。
「何で辻さんは、あんなに……」
「溜め息に、一人言まで。水野さん、どうかしたんですか?」
私の隣に座る後輩のあきちゃんに気付き、一人の世界から戻ってきた。
「はっ、あきちゃん」
「ちょっと水野さんったら、ぼんやりし過ぎですよ。辻さんと何かあったんですか?」
「な、何もないよ」
「だって、さっき『辻さんは何で、あんなに……』って、色っぽい顔で呟いてたじゃないですかー」
「ちょ、ちょっと、あきちゃん」
「気になって、この後の外回り、集中出来ませんよー」
たった今は男性の検診待ちで、営業部でたった2人の女子は待合所で待機中なのだ。
だから、こうして雑談もしていられる。
あきちゃんに話を聞いてもらえる、良い機会だ。
自分一人では気持ちの整理が出来ないから、相談に乗ってもらおう。
「あのね……昨日の夜、辻さんとご飯に行ったの」
「二人でですか?!」
「う、うん」