お願い!嫌にならないで
「辻さん、意外と手が早い!」
「ん?うーん、多分、そういう感じじゃなくて、私がね、悩んでいたのを見抜いてくれたんだと思う」
「むむ、水野さんの表情を見抜くなんて……なかなかやりますね、辻さん」
「そう。そうなの。あんまりマイナスな部分は、外に出さないように心掛けていたから」
今回のことに関しては、私事であるから特に細心の注意を払っていたのに。
「だからね、何で辻さんって、あんなに優しいんだろ?って思って」
私がそう言うと、あきちゃんは口を開けて、驚く。
「なんで二人して、そんなに鈍いんですかー!と言うか、純粋過ぎますって!」
「二人して?」
「ああ、もう!言っちゃいますけど、辻さん、水野さんのこと絶対、大好きですよ!」
「え……」
「だからぁ……」
「辻さんが、そんな私のこと……えっ、そんな……」
だって、辻さんがお節介やきで、優しいのは皆に対してで。
あんなに明るい笑顔を向けるのは、お店の大将にもだし、小岐須部長にだって。
あきちゃんや山本くんにだって、明るい雰囲気で話しているのを何度も見たことある。
自惚れるのは、まだ早いなんて思っていた。
……だけど、確かに昨夜の、いつもとは違う、とても柔らかい微笑み方は。
──あんな笑い方、見たことなかった。