お願い!嫌にならないで
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4件程の訪問が終わり、昼前のいい時間帯となってくる。
腹も鳴りそうだ。
飯が恋しくなる。
だが、やはり飯よりも、ある人物のことが未だに気に掛かっていた。
「辻さん、珍しく考え事っすか?」
「珍しくって、失礼な!俺だって普段から、頭回してますけど!」
「辻さんって、本当にからかいがいがありますよね。年上なはずなのに」
「いやいや、俺、本気で悩んでるんで。からかわないでください」
そうなのだ。
これまたどうでもいい事実だが、山本くんより俺の方が年上なのだ。
以前、部長や水野さん、中谷さんなど、ほとんどの人から意外だと言われた。
少し、傷付く。
しかし、直ぐにまた気に掛かっていることで、頭がいっぱいになる。
傷付いたことなど、これっぽっちも気にならなくなってしまう。
「一人で、何をそんなに悩んでるんすか?仕事のことなら、何でも聞いてください」
「ありがとうございます。でも、今回はちょっと仕事の話ではないので……」
「何ですか、今日は。遠慮しないでくださいよ」