お願い!嫌にならないで



健康診断の日以来、水野さんの俺に対する態度が突然、変わった。

何故だか分からないが、今朝も水野さんに挨拶をしたときのこと。



『水野さん!おはようございます』

『あ、お、おはようござい……』



返してはくれるものの、徐々に声が消え入る。

もはや、最後までは聞き取れない。

それに加えて、目線も合わない。

顔も、やけに真っ赤になっていた。

尋常ではない赤ら顔に、思わず体調が悪いのかと確認したときには。



『い、いえ?平気です!』



と一言だけ言って、水野さんはパソコンの方へ向かってしまった。

完全に避けられている。

何だ?俺は、何かを仕出かしてしまったのか?

それもよく考えたら、水野さんの様子がおかしくなったのは、健康診断の日からではない。

一緒にご飯に行った、その後からだ。

理由が、また分からないというのだから、本当に参る。

頭を抱えていると、山本くんが何かを思い出したようで、運転席から降りていく。

そして、後部座席を漁り出した。

ファイルを見つけ出すと、その中からA3用紙を2つ折りにした紙を手に持ち、運転席に戻ってくる。

すると、俺にそれを差し出す。
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