お願い!嫌にならないで
「え?」
「これ、お客様との委託契約書っす」
「あっ、はい」
「うちの会社でも、いくつか記入しないといけない箇所、押印する箇所があるんです。この内容については、水野さんが一番詳しいので、事務所に戻り次第、水野さんに教えてもらってください」
「水野さんに……」
「そうっす。そうしたら、少しは水野さんと話せるんじゃないすか?」
視線を契約書から、山本くんの方へと移す。
またニタニタしていると思ったら、そういう訳でもなかった。
微笑んでいる訳でもない。
至って、真面目な顔で言われた。
「水野さんは、仕事は仕事と割り切る人なはずなので。ただ挨拶するだけじゃなく、一度目的を持って、話し掛けに行ったらどうですか」
確か、この前ご飯に行った夜に、水野さん自身も、そんなことを言っていた気がする。