お願い!嫌にならないで
******



「お疲れ様でーす」

「お疲れ様です!」



5時過ぎに、会社に到着した。

既に水野さんと、中谷さんの女子組は戻っていた。

山本くんは、のんびりとした声と、調子でデスクへと向かっていく。

すると、周りをキョロキョロと見回した。



「あれ?水野さん、小岐須部長は?」

「今日は戻られないよ。お客様と18時30分から約束があるらしいから」

「なるほど、了解です。それなら、今日はさっさと帰っちゃいましょう」

「ふふっ。そうだね」



山本くんと話す水野さんは、やはり普通だ。

今も中谷さんと、何やら雑談をしているようだ。

いつも通り、柔らかく微笑んでいる。

何故、俺だけ。

俺のことだけ、避けるのだろう。

さすがの俺も、へこむ。

なかなか気持ちは切り替わらないが、就業時間まではしっかり働かなければならない。

今日中に出来てしまうことはして帰ろう。

契約書の入ったファイルを、鞄から取り出す。

よし、勇気を出すぞ。
< 68 / 239 >

この作品をシェア

pagetop